顎関節症で口を開けると音がする時の治し方は?スプリント療法も解説
ごはんのたびに顎がカクンと鳴って、このまま放っておいていいのか気になっている方もいるかもしれません。顎関節症で口を開けると音がする場合、多くは元に戻せる保存的な方法から対応します。この記事では、就寝前に使うスプリント療法(保険適用)の流れと、頬づえやスマホ姿勢など自宅での見直しを順に説明します。
顎のカクンという音は、顎関節症の代表的な症状のひとつです
口の開け閉めで鳴る「カクン」という音は、顎関節症でよくみられる症状です。痛みや口の開けにくさがなければ、すぐに治療が必要とは限りません。ただ、音の背景にほかの要因が隠れていることもあるため、状態を確認しておくと判断しやすくなります。
音の多くは関節円板(顎のクッション)のずれで起こる
顎関節は耳の前にあり、関節の中には関節円板というクッションがあります。日本歯科医師会によると、最も多いのは、関節円板が前方にずれて「カクンカクン」という音が出る状態です。ずれがさらに大きくなると、大きな口が開けられなくなります。[2]
顎関節症の3つの代表症状は「音・痛み・口の開けにくさ」
日本顎関節学会は、代表的な症状として、あごの痛み、口が開かない、あごを動かすと音がする、の3つを挙げています。[5] 日本歯科医師会は、顎関節症を日本人の2人に1人が経験すると言われるほど身近な病気としています。[1]
同学会は、命に関わるような恐ろしい病気ではなく、標準的な治療や自己管理で快方に向かうことが知られているとも説明しています。[5]
音だけでも、一度は診察を受けておくと判断しやすい
日本歯科医師会は、自然に軽快する場合もあるものの、ほかの要因が関係していることもあるため、放置せず歯科医院を受診することを勧めています。[1] 当院では症状を伺ったうえで、十分な説明と同意のもとに治療の進め方を一緒に考えます。
口が開かない・耳の付け根が痛むなら早めの受診が目安です
音に加えて、口が開けにくい、顎を動かすと痛むといった症状があれば、受診を考えたい状態です。口が開かない、顎が痛いという状態が続くときは、早めに歯科で相談してください。
受診を考えたい症状の目安
次のような症状は、顎関節症でみられる代表的なものです。
- 口を開けても、指が縦に3本入らない
- 顎を動かすと、耳の付け根が痛む
- 顎が外れる
- 口を開けると「カクン」と音がする
- 噛み合わせが変わった感じがする
急に口が開かなくなった直後は、無理に開けず様子を見ながら相談する
日本歯科医師会によると、急性期は痛みが強く、口が指1本分ほどしか開かなくなることもあります。多くは数日で痛みがやわらぎ、口の開き方も多少は改善するとされています。[3]
この時期に勢いよく口を開け閉めすると、関節をさらに傷つけるおそれがあります。数日たっても変わらない場合は、受診をご検討ください。
同じ治療を3か月続けても変わらなければ、方針を見直す
日本顎関節学会の診療ガイドラインは、3か月程度同じ治療を続けても改善がみられない場合は、早急に専門施設または専門医へ紹介するとしています。[7] 当院でも、経過をみながら治療の進め方を見直していきます。
顎関節症の原因は噛み合わせだけでなく生活習慣が重なって起こります

顎のカクカクという音の原因を調べると、噛み合わせが原因と書かれた説明を目にすることがあります。しかし現在は、複数の要因が重なって起こると考えられています。
噛み合わせだけで説明できるとは限らない
日本歯科医師会は、昔は「かみ合わせの悪さ」が原因と考えられていたものの、今は日常生活の様々な面に現れる要因が関わると説明しています。[2] 要因は人によってまちまちで、すべてを特定するのは難しいとされています。
頬づえ・スマホで下を向く姿勢・歯ぎしりが顎への負担になる
日本歯科大学新潟病院は、顎の症状の背景にある生活習慣として、ほおづえ、早食い、ガムの咀嚼、うつぶせ寝、長時間のコンピュータ操作などの不良な作業姿勢を挙げています。[8]
スマホで下を向く姿勢も、首や肩の姿勢を崩して顎の筋肉に負担をかけることがあります。就寝中の歯ぎしりやくいしばりも、同じように顎へ力をかけ続けます。
日中の無意識の歯の接触にも注意する
日本顎関節学会は、頬杖をやめる、猫背などの姿勢をよくする、仕事中や休息時に上下の歯が接触していたら歯を離すといった生活指導を示しています。[6] 歯ぎしりは自分では気づきにくいため、診察で歯の状態を確認することも手がかりになります。
就寝前に使うスプリント療法は保険適用で顎への負担を減らします

スプリントは、歯を覆うマウスピース型の装置です。就寝中の歯ぎしりやくいしばりで顎にかかる力を和らげる目的で使います。当院でも、就寝前に装着するスプリント療法を保険適用で行っています。
初期治療は、元に戻せる方法から選ぶのが基本
日本顎関節学会のガイドラインは、成人の顎関節症の初期治療として、自己開口訓練とスタビリゼーション口腔内装置(スプリント)の装着を提案しています。ただし、推奨は「弱い推奨」で、エビデンスの確実性も高くはないと示されています。[7]
| 選択肢 | 内容 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| スプリント療法 | 就寝前にマウスピース型の装置を装着し、顎への負担を和らげる | 音や痛みがあり、就寝中の歯ぎしり・くいしばりが疑われる場合 |
| 開口訓練・マッサージ | 顎や周囲の筋肉を動かして、動きを整える | 筋肉の緊張や口の開けにくさがある場合 |
| 生活習慣の見直し | 頬づえ・姿勢・歯の接触などの癖を修正する | どの場合にも土台になる |
| 噛み合わせの調整 | 歯の形の微調整や被せ物の高さを整える | 精密な診査で、噛み合わせが主な要因と判断された場合 |
日本歯科医師会は、まず元に戻せる治療から選ぶという考え方を示しています。[3] 歯の形を整える処置は元に戻せないため、当院でも噛み合わせの調整は、精密な診査で噛み合わせが主な要因と判断された場合に、理由を説明し同意をいただいてから進めます。
スプリント療法の一般的な流れ
来院回数や期間は症状によって異なります。一般的な流れは次のとおりです。
- 問診・診察: いつ、どんなときに音や痛みが出るかを伺い、口の開く幅や顎の動きを確認します。
- 型取り: 歯の型を取り、自分専用のスプリントを作ります。
- 装着・調整: 就寝前に装着し、当たり方を調整します。
- 経過の確認: 音・痛み・口の開き方の変化を確認し、必要に応じて調整や別の方法を検討します。
慣れるまで違和感があり、効果には個人差がある
装着初期は、口の中の違和感や唾液の増えた感じが出ることがあります。症状の変化には個人差があり、スプリントだけで解決するとは限りません。先ほどの生活習慣の見直しと並行して進めることが大切です。
頬づえやスマホ姿勢の見直しは、自宅でできる顎のケアです

スプリント療法と並んで大切なのが、日常の癖を直すことです。日本顎関節学会は、日常の行動や癖が症状と関係している場合があり、自分で気をつけることで症状が軽くなる場合があると説明しています。[6]
頬づえ・片側噛み・うつぶせ寝をやめる
頬づえは、顎を横から押し続ける姿勢です。うつぶせ寝や、いつも同じ側で噛む習慣も、顎の片側に負担が集中します。気づいたときに直すだけでも、顎への負担は減らせます。
スマホやパソコンでは、顔を前に出さず上下の歯を離す
画面を見るときは、顔が前に出ていないか、背中が丸まっていないかを確認してみてください。日本口腔外科学会は、顔の筋肉をやわらげ、軽く上下の唇を触れさせ、歯を接触させないようにすることを勧めています。[4]
痛みが強い時期は、硬いものと大きなあくびを避ける
同学会は、大きなあくびや長時間の歯科治療を避けることも挙げています。[4] 痛みがあるうちは、食べ物を小さく切ってやわらかいものを選ぶと負担を抑えられます。
まとめ
- 口を開けると鳴る「カクン」という音は、関節円板のずれが背景にあることが多く、日本人の2人に1人が経験すると言われる身近な症状です[1][2]。
- 口が指3本分開かない、耳の付け根が痛むなどの症状があれば、早めの受診が目安です。
- 原因は噛み合わせだけでなく、頬づえ・スマホで下を向く姿勢・歯ぎしりなどの生活習慣が重なって起こると考えられています[2][8]。
- 就寝前に使うスプリント療法(保険適用)は、元に戻せる初期治療のひとつです。噛み合わせの調整は、診査で必要と判断された場合に説明のうえで行います[3][7]。
- 頬づえをやめる、上下の歯を離すなど、自宅での見直しを並行して行うことが大切です[6]。
口が開けにくい、顎を動かすと耳の付け根が痛む、噛み合わせが変わった感じがするなど、顎の不調が続いている方は、オーサムデンタルクリニックにご相談ください。症状を伺ったうえで、治療の選択肢を説明します。受診の流れは初めての方へ(初診の流れ)をご覧ください。WEB予約・LINE予約、お電話(045-489-7350)で受け付けています。月・火・水・金は19時まで、土日も診療しています(木曜・祝日は休診)。
参考文献
[1] 日本歯科医師会「お口のなんでも相談「顎関節症」」jda.or.jp
[2] 日本歯科医師会「顎関節症 – 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020」jda.or.jp
[3] 日本歯科医師会「顎関節症 – 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020(治療はどのようにするのですか)」jda.or.jp
[4] 日本口腔外科学会「あごの関節の音がする/口が開かなくなった/あごが痛い|口腔外科相談室」jsoms.or.jp
[5] 一般社団法人日本顎関節学会「顎関節症とは」kokuhoken.net
[6] 一般社団法人日本顎関節学会「顎関節症の主な治療は」kokuhoken.net
[7] 一般社団法人日本顎関節学会「顎関節症初期治療診療ガイドライン 2023 改訂版 サマリー」kokuhoken.net
[8] 日本歯科大学新潟病院 歯科部門「あごの関節・歯ぎしり外来」ngt.ndu.ac.jp